一貫した言葉遣いが生む信頼|ブランド価値を高める細部(言葉・文章)へのこだわり

ブランディングにおいて、一貫した行動や言葉遣いがいかに重要か、そして細部へのこだわりがどのようにブランド価値を高めるかについて考えてみましょう。言葉の選び方一つで、企業の印象は大きく変わります。
特に日常的なコミュニケーションの中で、理念を体現するための具体的な工夫について解説します。
バリューを体現する電話対応の力
私が関わっている会社では、行動指針(バリュー)の一つとして「爽やかな電話対応をする」という項目があります。この単純な指針が実際にどのような効果をもたらすのか、私自身が体験した事例を通して考えてみましょう。
理念が実践された瞬間の気づき
先日、業務上の用件でその会社に電話をする機会がありました。私は取引先の立場であり、お客様ではありません。それにもかかわらず、対応してくれた社員の方の声は非常に爽やかで明るく、電話越しにも笑顔が伝わってくるようでした。
以前、その会社の社員インタビューを担当した際、全員が電話対応に特に気を配っていると話していたことを思い出しました。しかし、それを実際に体験してみると、その効果の大きさに驚かされました。「これこそが彼らの言っていたことだ」と実感したのです。
一貫性がもたらす強い印象
明るい声のトーンは、不思議なことに相手の気持ちまでも引き上げる効果があります。電話をかけた側の私自身も、その明るさに引っ張られるように気持ちが高揚するのを感じました。
もしこの対応が全社員に一貫して徹底されているとしたら、顧客にとってどれほど心地よい体験となることでしょう。この一貫性こそが、信頼感を生み、強固なブランドイメージを構築するのです。
文章に表れるブランド特性
行動だけでなく、言葉や文章の細部にもブランドの特性は現れます。特に文書化された際のニュアンスの違いが、ブランド価値に大きく影響することがあります。
句読点の選択がもたらす印象の違い
例えば、電話応対のマニュアルを作成する場合を考えてみましょう。
「お電話ありがとうございます。」
「お電話ありがとうございます!」
では、同じ言葉でも読み手に与える印象が全く異なります。
マニュアルに単に「お電話ありがとうございます」と記載すれば、多くの社員は平坦なトーンで「お電話ありがとうございます。」と発するでしょう。しかし、「お電話ありがとうございます!」とビックリマークを使用することで、読み手は自然と明るく活気のあるトーンで発声するようになります。
ブランディングに合わせたトーンとマナー
このように、企業のブランディングに合わせたトーンとマナー(トンマナ)をマニュアルに反映させることで、理念の浸透を促進することができます。それは単なる言葉遣いの問題ではなく、企業文化を形作る重要な要素となります。
「はい、承知しました」なのか「分かりました!」なのか、こうした選択もビジョンやミッション、バリューに基づいて行われるべきです。爽やかで明るい電話対応を理念とするなら、句点(。)よりも感嘆符(!)の方が適しているという判断は自然に導き出されます。
理念浸透のための具体的教育法
理念やブランドを社内に浸透させるためには、具体的かつ分かりやすい教育方法が必要です。抽象的な指示だけでは実践に結びつきにくいものです。
言葉のニュアンスを具体的に伝える工夫
「明るい電話対応をしてください」と単に言うだけでは、実際にどう対応すべきか社員に伝わりにくいことがあります。しかし「丸(。)ではなく、びっくりマーク(!)を意識してみてください」と具体的に伝えると、多くの場合、すぐに変化が見られます。
このように、言葉の幅やボキャブラリーを持っておくことで、理念を伝えやすくなり、組織全体への浸透もスムーズになります。抽象的な概念を具体的な行動に落とし込むための橋渡しとなるのです。
状況に応じた言葉の使い分け
顧客対応のシーンによっても、適切な表現は変わってきます。例えば、お客様からのクレームや相談を受ける場合は、明るさよりも共感や謙虚さが求められるでしょう。
「そうですか。」ではなく「そうですか…」と省略記号(…)を使うことで、相手の話に真摯に耳を傾け、共感している姿勢を表現できます。「申し訳ありませんでした。」よりも「申し訳ありませんでした…」の方が、より深い謝意を表すことができるのです。
言葉の細部に宿るブランド
ブランドを体現するためには、言葉の選択や句読点の使い方といった細部にまでこだわることが重要です。マニュアル作成時や教育の場面では、企業の理念やブランドに合わせた語尾やニュアンスの調整を具体的に伝えることで、組織全体での一貫した対応が可能になります。
一見些細に思える「。」か「!」かの違いが、お客様の体験や企業イメージを大きく左右することがあります。ブランディングは大きな戦略だけでなく、日常の小さなコミュニケーションの積み重ねにこそ、その真髄があるのです。
皆さんも、マニュアル作成時や社員教育の際には、言葉の末尾やニュアンスにも注目してみてください。ブランドの一貫性を高め、より強固な企業イメージの構築につながるはずです。
本記事は、弊社代表の音声配信「stand.fm」を記事化しています。
音声は以下のURLから視聴できますので、ぜひそちらもお聞きください。
https://stand.fm/episodes/67ebc3e833fbd115e3d85824

名城 政也/Masaya Nashiro
琴線に触れる株式会社 代表取締役