ビジョン・ミッション・バリュー|効果的な言語化と活用法

企業や個人が目指す方向性を示すビジョン・ミッション・バリュー(VMV)。この理念体系をどのように言葉で表現し、日常の行動に落とし込むかは、組織の成功や個人の成長に大きく影響します。
しかし、抽象的すぎて実践しづらかったり、逆に具体的すぎて視野が狭くなったりする落とし穴もあります。
この記事では、VMVを効果的に言語化するコツと、実際の活用法について解説します。
理念体系の基本を理解する
ビジョン・ミッション・バリュー(VMV)は企業や個人の理念体系を構成する重要な要素です。これらをどのように言葉で表現し、実際の行動に落とし込むかは、組織の方向性を決める上で非常に重要です。
用語の定義と順序
まず、これらの用語について整理してみましょう。一般的には以下のような定義が使われています。
- ビジョン:目標・理想、実現したい社会の姿
- ミッション:ビジョンを実現するための会社の使命
- バリュー:ミッションを達成するための行動指針
実はこれらの順序については、「ミッション・ビジョン・バリュー」という並びを使う方もいます。この場合、
- ミッション:使命
- ビジョン:目標・理想
- バリュー:価値観、行動指針
どちらが正しいという絶対的な決まりはありません。重要なのは、組織内で定義と順序を明確にし、一貫して使用することです。「会社として何を目指すのか」「そのために何をするのか」「どのような行動原則で進むのか」という本質が伝わることが大切なのです。
わかりやすい理念の言語化
ビジョン・ミッション・バリューを言葉にする際、多くの企業や個人が陥りがちな罠があります。それは「かっこいい言葉」や「格調高い表現」を求めるあまり、実際には何を意味しているのか理解しづらい内容になってしまうことです。
効果的な理念は、聞いた人が具体的なイメージを持ち、行動に移せるものでなければなりません。
カッコつけない、シンプルで具体的な表現を
理念を言語化する際の最大のポイントは、「カッコつけず、シンプルに具体的な内容を届ける」ことです。特にビジョンやミッションは抽象的で格好良い言葉にしがちですが、あまりに抽象的すぎると機能しなくなります。
例えば「より良い地球環境にする」というビジョンを掲げた場合、社員は「具体的に何をすればいいのか」という疑問を持ちます。ゴミ拾いをすべきなのか、禁煙にすべきなのか、範囲が広すぎると行動に結びつきにくくなります。
かといって具体的にしすぎると狭まりすぎる恐れもあります。このバランスを取ることが言語化の難しさであり、専門家の支援が求められる理由でもあります。
実際の企業でのVMV構築事例
理論だけでは理解しづらいビジョン・ミッション・バリュー。ここでは、実際の企業でどのようにVMVが構築され、機能しているかを見ていきましょう。
適切に設計された理念体系は、社員の行動指針となり、組織文化を形作り、対外的なブランディングにも一貫性をもたらします。具体例を通じて、効果的なVMVのあり方を学んでいきましょう。
デジタルコンテンツ制作会社の例
筆者が実際に携わったデジタルコンテンツ制作会社「SOUNE」のビジョン・ミッション・バリューの構築事例を紹介します。この会社はシステム開発、コンテンツ制作、動画制作など様々なサービスを提供しており、クリエイティブに長けた人材が集まっていました。
ビジョン:クリエイティブの「できない」をなくす名人達
この会社の役員は全員が自分の分野で極めたいという強い思いを持ち、業界内でもクオリティの高さで認められたいという共通の願望がありました。そこで「できないをなくす」「名人たち」という言葉を用いて、単なるプロフェッショナル以上の存在を目指す姿勢を表現しています。
ミッション:驚かせるほどの、最高水準以上を提供する。
「最高水準以上」という表現は、プロフェッショナルを超えた「名人」レベルを意味し、さらに「驚かせるほど」という言葉でクオリティへのこだわりを強調しています。
バリュー
- 求められる+αを提供する。
- 今やれることは今のうちにやる。
- 二度、三度の確認。二手三手の先回り。
- 「なんとなく」の作業はしない。
- 「なぜ」を説明できる作業。
- 「できない」で終わらせない。
- チームワークで解決します。
- 挑戦心を忘れず、最新情報もすぐ試す。
- 感情的にならない。
これらのバリューは、ビジョンとミッションを実現するための具体的な行動指針となっています。「感情的にならない」は代表が特に重視していた価値観で、感情に左右されず常に最高水準のクリエイティブを提供する「名人」のあり方を象徴しています。
事例については、以下のページで具体的な内容を解説していますので、そちらも参考にしてください。
効果的なVMVの特徴と活用法
優れたビジョン・ミッション・バリューは単なる飾り言葉ではなく、組織や個人の意思決定や行動の基準となるものです。ここでは、効果的なVMVが持つべき特徴と、それを日常の中でどのように活用していくかについて解説します。
理念が「絵に描いた餅」にならないよう、実践的な活用法を知ることが重要です。
具体的かつ会社固有の価値を示す
ビジョン・ミッション・バリューを構築する際は、大きすぎる目標を掲げる必要はありません。「世界平和」や「地球環境の改善」のような大きなテーマは誰もが望むことですが、それがあなたの会社だからこそできることなのかを考える必要があります。
あなたの組織だからこそ実現できる独自の価値を具体的に言語化することが、効果的なVMVの鍵です。具体的で端的な表現が、実際の行動に結びつきやすいのです。
個人へのVMVの応用
ビジョン・ミッション・バリューは組織だけでなく、個人でも作るメリットがあります。
- 自分の軸がぶれない:「自分は何をやりたかったのか」と迷った時に立ち返れる
- 仕事選びの判断基準になる:自分のビジョンに合致する選択ができる
- 自己点検のツールになる:自分の行動が掲げたバリューに沿っているか確認できる
例えば、バリューとして「挑戦心を忘れず最新情報もすぐ試す」を掲げているなら、AIやチャットGPTなどの新技術に取り組んでいないことに気づけば、「これは自分のブランディングと違う」と認識し、行動を修正することができます。
SNSなどでのブランディングの一貫性を保つ
ビジョン・ミッション・バリューを明確にすることで、SNSなどでの情報発信においても一貫性を保つことができます。「このビジョンを掲げているなら、こういう投稿が適切だ」「このバリューに合わせると、この内容は避けるべきだ」といった判断基準になります。
例えば、「最新情報もすぐ試す」というバリューを持っているなら、新しいツールやテクノロジーを積極的に試し、その体験を共有することがブランディングの一貫性につながります。
効果的なVMVの構築に向けて
ビジョン・ミッション・バリューは、組織や個人の方向性を示す羅針盤です。効果的なVMVを構築するためには
- 抽象的すぎず具体的すぎない、バランスの取れた表現を心がける
- カッコつけずにシンプルで理解しやすい言葉を選ぶ
- 組織や個人の独自性が表れるものにする
- 日常の判断や行動に落とし込める具体性を持たせる
こうして作られたVMVは、組織の一体感を高め、個人の成長を促し、外部へのブランディングの一貫性を保つ強力なツールとなるでしょう。もし自分だけでVMVの構築が難しいと感じたら、専門家のサポートを受けることも検討してみてください。
本記事は、弊社代表の音声配信「stand.fm」を記事化しています。
音声は以下のURLから視聴できますので、ぜひそちらもお聞きください。
https://stand.fm/episodes/67e98c214e79ac6a98826788

名城 政也/Masaya Nashiro
琴線に触れる株式会社 代表取締役