ブランドと言葉の関係性|記事にブランドを反映させるポイント

なぜ言葉がブランドになるのか、そしてブランドがなぜ言葉に現れるのか。これは私たちが考える以上にシンプルな問いです。日常生活の中で自然と行われていることに、その答えが隠されています。
ブランドが言葉に現れるのは、その会社や個人が一つの理念を常に意識し、それを体現しているからなのです。
理念と言葉の自然な結びつき
理念と言葉は、意識せずとも自然に結びついていくものです。それは日常の些細な場面にも表れています。
例えば、ライターという立場であれば「ユーザーファースト」という理念を掲げていると、それに関わる言葉が自然と会話の中に出てきます。「それは相手のことを考えているよね」といった表現が日常的に使われるようになるのです。
人が常に意識していることは、必然的に日常の言葉遣いに表れてきます。これが会社や個人のブランドに紐づいていくのです。
ブランドの特性と言葉の関係
言葉は会社の特性を如実に表す鏡のようなものです。日々の何気ない会話や公式な場での発言、文書やSNSでの発信など、あらゆる場面で会社のブランド特性が言葉として表出します。
さまざまな企業特性と言葉の表れ方
ブランドの特性によって、日常的に使われる言葉も異なってきます。
前向きな会社であれば、「努力」や「頑張る」といった言葉が社員間や社長の発言に頻繁に登場するでしょう。また、情熱的な会社では、「熱い」という表現が会話の節々に自然と現れるものです。
高級なレストランやホテルであれば、その理念に沿って「品」を意識した言葉遣いが社員一人ひとりに自然と身についていくのです。
言葉遣いとブランドの一致
ブランドと言葉遣いの一致は、信頼性の高いブランドイメージを構築する上で不可欠な要素です。特に顧客と接する機会のある場面では、その一致が強く問われることになります。
公式な場での言葉の選択
プライベートでまで会社の理念に基づいた言葉遣いをする必要はありません。しかし、社員インタビューや会社の動画撮影など、公式な場では会社としての意識が働きます。
高級志向の会社であれば、「お客様がこうおっしゃっておりました」といった丁寧な言葉遣いになるでしょう。一方、元気で活発なイメージの会社では、「お客様がこう言ってました。それで僕こうしたんです」といったカジュアルな表現の方が、会社のブランド理念を適切に伝えることができます。
ブランドと言葉の正しい関係性
ブランドと言葉の関係を考える上で、両者の前後関係を正しく理解することが重要です。多くの場合、先にブランドがあり、それに伴って言葉が生まれてくるというのが自然な流れです。
ブランドは自然に言葉に現れる
重要なのは、ブランドを意識的に作り上げるのではなく、日常から自然と身についた理念が言葉に表れることです。普段から理念が浸透していれば、自然とその人の言葉や口調に出てくるものなのです。
言葉がブランドを作るという誤解
誤解してほしくないのは、「ブランドが言葉に現れる」のであって、「言葉がブランドを作る」わけではないということです。後者の考え方は危険です。
「うちはこういう言葉遣いをしましょう」と最初に言葉を決めてしまうと、本来の会社のあり方との乖離が生まれてしまいます。ホームページやSNSなどの発信全てにおいて、先に形式を決めてしまうと本質とのギャップが生じるのです。
本来の姿とブランドの一致
ブランドは根本的に、組織や個人の本来の姿を反映するものであるべきです。無理に作り上げた姿は長続きせず、いずれ綻びが生じてしまいます。
例えば、元気で活発な社風なのに、「高級志向を目指したいから丁寧な言葉遣いをしましょう」としてしまうと、ブランディングのミスになります。本来頑張ろう、元気でやっていこうという人たちが集まっているのに、丁寧で落ち着きのある言い回しを強制すると、「本来の自分たちと違う」という不協和が生まれます。
ブランドは人の集合体が作るもの
ブランドとは単なる看板や理念ではなく、そこで働く人々の総体として形成されるものです。特に対外的な印象という観点では、組織の一人ひとりがブランドの担い手となります。
ブランドは、そこにいる人たちの集合体が自然と作り上げていくものです。特に現場と本部に分かれている会社では、お客様と接する現場の人たちこそがブランドを作っています。
ブランドとは「周りからどう見られているか」という外部からの評価なのです。本部がどんなに「こういう風にしよう」と言っても、実際にお客様と接している現場の人たちがブランドの実体を作っているのです。
ギャップがブランドを崩す
言葉で表現されるブランドイメージと実態の間にギャップがあると、信頼性が大きく損なわれます。これはブランドの一貫性という観点から避けなければならない事態です。
明るく活発な従業員ばかりなのに、発信内容が礼儀正しく大人しいものだとどうなるでしょうか。その言葉を見た人は「大人しく誠実な会社」だと思って入社やサービス利用を決めます。しかし実際に接する従業員が明るく活発だと、期待との間にギャップが生まれ、ブランドは崩れてしまいます。
効果的なブランディングの実践
効果的なブランディングを実現するには、トップダウンでイメージを押し付けるのではなく、現場の実態を尊重し理解することから始めるべきです。理想を追い求めて無理に作り上げたブランドは、現場との不協和音を生み出し、長続きしません。
真のブランディングとは、現場の良さを見極め、それを適切な言葉で表現することです。会社の本質が言葉に自然と現れるような仕組みを作ることが、結果として強いブランドの構築につながります。
現場から汲み取るブランディング
効果的なブランディングのためには、現場から実態を汲み取ることが大切です。
まず現場の人たちがどのようにお客様と接しているかを細かく観察しましょう。次に、どんな人材が多いのかを正確に把握します。そして最後に、それらの実態に合わせて発信内容や言葉遣いを決めていくのです。
例えば、明るい従業員が多い企業であれば、「明るい言葉で伝えよう」という方針が自然と生まれます。ネガティブな言葉は使わないようにし、無理に落ち着きのある表現を強制する必要はないでしょう。
このように、現場の実態から言葉の選択基準が導き出されるのです。
ブランディングの実現と定着
効果的なブランディングが組織内に定着するためには、理念の言語化と一貫した実践が不可欠です。言葉はその過程で重要な役割を果たします。
ブランドの土台作り
まずはブランドを意識していない会社は「うちはどういう会社なのか」という自己認識から始める必要があります。この土台がなければ、言葉選びも一致せず、発信内容もまとまりません。
土台ができれば、「この会社はこういうブランドだからこういう発信をする」「この会社はこういう会社だからこういう言葉を使う」といった一貫性が生まれます。
無味無臭の言葉ではなく、その会社らしさが伝わる発信が可能になるのです。
ブランドに沿った言動の修正
ブランドの軸ができていれば、それに沿わない言動を修正することもできます。
例えば「元気で明るく活発」という理念があるなら、「自信がない」「わからない」といった消極的な返答は、「うちのブランドとして正しくない」と訂正できるのです。
このように、ブランドの土台が社員の行動や言葉遣いの指針となり、一貫したブランドイメージを築いていくことができます。
言葉がブランドを映し出す
ブランドと言葉の関係は、表面的なものではなく、組織や個人の本質から自然と生まれる深いつながりを持っています。言葉は単なる表現手段ではなく、ブランドの本質を映し出す鏡なのです。
なぜブランドと言葉、文章が紐づいていくのか。それは単に形式的なものではなく、会社や個人の本質的な理念が自然と言葉に現れるからです。
真のブランディングとは、外側から作り上げるものではなく、内側から滲み出てくるものなのです。
本記事は、弊社代表の音声配信「stand.fm」を記事化しています。
音声は以下のURLから視聴できますので、ぜひそちらもお聞きください。

名城 政也/Masaya Nashiro
琴線に触れる株式会社 代表取締役